―― | この写真の小屋の中で、糸を繰っていたんですか? |
《藤井》 | うん。これがモーターの代わりをしてたんだね。私が現在地に引っ越してきたとき、私が住んでたところは町のはずれで電気が引けなかった。 (資料を出して) |
《藤井》 | これは私が住んでいた頃の地図なんだけれどね。この通りに面してずっと軒を連ねてたわけ。ここに当時の用水路が流れていて。今は蓋をしちゃったけど。これを見ると撚糸業というのがざらにあるわけ。印付けておいたけど、撚糸ばかりでしょう。 |
《山澤》 | 昔は撚糸業はみんな家族でやっていた。お召しっていうのは色々な工程があるからね。ひとつの家じゃできない。 |
《知村》 | これが当時の作業をしてる写真。一本一本これが繋がってる。 |
―― | 糸が切れたらどうするんですか? |
《知村》 | 廻しながら繋ぐ。この写真は丁度繋いでるところ。60本も錘があるからいつもどこかしら糸が切れる。だからつきっきりで仕事してる。 絹糸は湿度が欲しいわけ。湿っていた方が撚りやすかった。だから工場の床はみんな土間だった。水をまいたりして常に湿気を保っていた。 |
《藤井》 | 古い撚屋[よりや]になると穴を掘ってそこで作業してた。壁も土にして土の面積が大きくなるようにした。 |
《山澤》 | 俺なんかの時代にはそういうのはなくなったけどね。 |
―― | 長谷式というのがあると聞きました。どういう違いがあるんですか? |
《知村》 | 長谷式というのはね全然違って、動力にベルトを使う。錘を互い違いにベルトの上と下において、ベルトで錘を廻す。だからどうしても大きくなっちゃう。 |
《藤井》 | 八丁式は一本一本廻しているでしょう。だからスリップが少ないわけ。長谷式はね(図を書いて)こうだっけか。ベルトの上を通る。 |
《知村》 | 八丁じゃ量があまりできないので、洋装なんかの広い面積を織るために必要になったんだね。 |
《藤井》 | 量はできないけどいい糸はできるわけ。 (写真を出して) |
―― | これが管巻き機ですか? |
《山澤》 | そうですね。これが右撚りと左撚り。これを間違えると大変なことになっちゃう。 |
―― | 見ただけじゃわからないですか? |
《知村》 | 色が同じでしょう、だからわからないですね。枠に巻いた時に糸の端を止める時に、斜めに止めとくとか、バツ印に止めとくとか、そうやって見分けられるようにしていました。 |
《山澤》 | あとは枠に色をつけたりとかね。 |