石川・小保方両氏報告

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「まちづくりの現場が求めるネットワーク」
―― 地域コミュニティ活動と次世代技術の融合 ――


石川
:ただいまご紹介頂きました『桐生市老人クラブ連合会』理事、出版事業部長を仰せつかっております、石川でございます。
よろしくお願いいたします。ただいまお話がありましたように、平成14年度に新・あすへの遺産という本を出版いたしました。
先ほどの塩崎さんのお話の最中に、スクリーンの中に“多世代間の交流”という言葉がでてきましたが、我々シルバー世代はそれを非常に強く、また勇気のある言葉として受け取っております。
我々もNPO桐生地域情報ネットワークの方と一緒に仕事をしまして、生涯青春というパワーを受け取りました。特にこの小保方君と仕事をしておりまして、私は今78歳でございますが、彼と同じ30代ぐらいに若返ったかなぁと、そんな感じがしております。

このまちは昔から織物産業で成り立ってきました。西の西陣、東の桐生と言われたものです。今は残念ながら織物産業は他の産業に変わってきていますが、我々シルバー世代としては、今こそ織物産業について今まで蓄積された文化や伝統を残すべきと考え、多世代間交流の一つの形でもあります「新・あすへの遺産 桐生織物と撚糸用水車の記録」の発刊に至ったわけでございます。
これは原稿を集めて印刷しただけのものではありません。全て若い世代と我々が一緒になって、当時活躍していた方たちのところへ訪問しまして、インタビューを行って文章をまとめていったものです。ですから、当時の状況が今の時代に生き生きと書かれているわけです。
我々『桐生市老人クラブ連合会』の会員はほぼ1万人ぐらいになっておりますが、以前は老人だけで色々な本を出してきました。その中で織物関係についても色々と書いていただいた方が30数名おりまして、今回は『NPO桐生地域情報ネットワーク』と協力してインタビューを行った次第です。

これを読んだ方は皆さん、とても感激して頂きました。ある方には「この時期に、よくこの本を出してくれた。世代間の断絶を恐れていた若い世代とこれだけ綿密に打ち合わせをし、ここまでまとめてくれた」と感謝して頂きました。
これもやはり、現在のIT技術、コンピューターを初め、デジカメにビデオなどがあればこそわずか1年でこれだけの本がまとまったのではないかと思います。
この本の発刊にあたり、前橋と桐生で出版記念展示を行いました。前橋では県庁のロビーで行なって、色々な方に見ていただきましたが、私の印象に残っているのは、後藤出納長より、「西毛より東毛の方が産官学、民間活力が大きいんじゃないか」とおっしゃっていたことです。そんなこんなで平成14年度の後、15年度についても前年同様、県の方から予算を頂きまして、「職人の系譜」という次の段階の仕事に当たっているわけです。

我々も当初は世代間交流と言っても、2世代ぐらいのものと考えていました。しかし実際はそれをはるかに超える交流となりました。まさに多世代間交流です。若い人達との交流で大きなパワーをもらったと実感しております。

以上で次に移りたいと思います。

小保方:続きまして、本年度の事業に関して発表させていただきます。
本事業を担当しています小保方と申します。よろしくお願いします。
前年度に引き続き、今年度も「職人の系譜」ということで『桐生市老人クラブ連合会』と『NPO桐生地域情報ネットワーク』が協力しながら、“桐生お召し”に関わった職人たちにインタビューを行っております。

もちろんこれも、先ほど石川さんにお見せいただいた本のように出版いたしますので、その際は是非とも皆様に、お手に取ってご覧いただければと思います。

画面の方をご覧ください。これはインタビューを行った方をチャートにしたものです。
最初の生糸から始まり、どのように最終的に織物になるかというのを追ったものです。
実際に取材してみて、生糸からお召しができるまでには、非常に多くの手間がかかっていて、そこにはたくさんの確かな技術を持った職人がいたことを、実感いたしました。

これまでにも、公共の機関が桐生の織物のビデオを作っていたりしたのですが、例えばここに紹介しています「よじり屋」という仕事は紹介されていませんでした。
織物を織っていて、経糸が終わる前に新しい経糸を繋げるわけですが、その時にこの方たちに仕事をして頂くわけです。それが以前、とある公共機関で作られたビデオの中では紹介されていなかったのです。
これも今回、お話を聞いて進めていくうちに私たちも勉強になった部分の一つで、このような方もチャートに加えていこうとなったわけです。
その他にも同じような例があります。例えば、「機械直し」という呼ばれる方がいました。こちらは機屋さんに常駐していて、ジャカード機に紋紙をセットしたり、機械に関するトラブルですとか、そういうものに対処する仕事でした。
やはり彼らも「よじり屋」さんと同様、彼らの存在なくして織物を織ることはできなかったのです。
さらに「機料屋」という方たちもいます。こちらは、機屋さんで使う機械などを全て一手に卸していたところなんですけども、桐生には一時期そのような会社がたくさんあったそうです。織機を運ぶだけの専門業者がいたということも資料を見ただけではわからなかったことですが、お話を聞くうちにそういうことも明らかになってきました。

現在は、第一回目の取材を終えまして、これから第二回目の取材がはじまります。第二回目の取材では市老連の方と、群馬大学の学生を中心としたグループとでチームを組み、それぞれの職人のお宅に伺ってお話を聞いていく予定です。

取材をしてはっきりしたのは、ほとんどの職人には、次の世代、つまり跡取りがいないということです。つまり彼らがお仕事を辞めたら、その技術が伝承されないということが分かりました。私たちは、こういった事業を進めていく上で様々な情報を得てきました。単純に言ってしまえば、これらの事実があまり知られてない状況で、皆さんよりも少し早く、その事実を知ってしまったというわけです。
これはどうしたらいいかということになります。そこで、やはり色んな人にまず考えてもらう必要があるのではないかと思いました。どのような技術があって、それが今どのような状況になっているかということを投げかけていく必要があるのではないかと考えています。

これからの課題としては、まず産業としての採算ベースの検証です。どのくらいの量を発注すればそれぞれの職人さんに働いてもらえるのか、そういったことです。その他には、例えば強撚糸という普通の織物で使う糸より強く撚った糸があるのですが、その糸自体が商品にならないか、つまり今残っている技術が商品と直結しないかというようなところまでを模索しています。これらの技術を、もう一度産業として、そして、桐生の文化として残すことが出来るのではないか?、そういうところまで見つめてプロジェクトを進めているのです。

ですが実際には、なかなか情報を得ることが難しいという事実もあります。織物関係のイベントをする時にでも桐生タイムスに紹介してもらったり、地元メディアと協力しながら情報集めに奔走して、それらを提供していく、情報を集めながらそれらを出していくという状況になっており、これは決して効率的ではないなと感じながら事業を進めているのです。今後はこの事業で私たちが得た情報を、どのように蓄積し、公開していくかということも考えなければいけないのではないかと思っています。これらを桐生地域の財産として皆で共有できるのではないかと思います。

今回、このフォーラムに参加したことによって、“P2P”の新たな技術によって、これらの情報の配信や共有、さらには、新しい情報の収集が可能になるのではないかと考えております。最後はお願いのようになってしまうのですが、関係者の方には是非ともご協力をいただければと思っています。

以上で、本事業の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

塩崎:ありがとうございました。私が実際に携わっている部分もあるのですが、面白い活動だと思います。

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