星合隆成氏講演

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「まちづくりの現場が求めるネットワーク」
―― 地域コミュニティ活動と次世代技術の融合 ――




西山
:第二部としてパネルディスカッションを進めていきたいと思います。
まず最初に、ごく簡単にパネリストの紹介をさせていただきます。
まず星合隆成さんです。NTT研究所の主幹研究員をされています。
次に三友仁志さんです。早稲田大学大学院国際情報通信研究科の教授をされています。
次に吉浦紀晃さんです。群馬大学総合情報処理センターの助教授をされております。
次に長田克比古さんです。NPO桐生地域情報ネットワークの副理事長をされております。動物病院の院長として活躍されております。
次に先ほど講演をしていただいた、富山慶典さんです。富山さんは桐生の地域活動にも4年前から参加されていて、そういう立場からもお話に参加していただきたいと思っています。

それでは、地域社会と次世代ネットワーク技術のP2Pの将来性を考えるシンポジウムということで、テーマとして次世代ネットワークは地域情報化の救世主となるかという題で進めたいと思います。

まず情報化技術というのを道具と考えれば、活動意欲と実態がないところでは新しい道具の利用方法自体が見出せないこともあります。
しかし逆に見れば、新しい技術である道具の内容を理解していないと、地域の活発な活動にそれを生かすことができないという面も同時にあるわけです。
今回のフォーラムで取り上げている次世代技術とはP2Pのことですけども、まずこれの基本的な解説をP2P技術の開発を行っている星合さんにお願いしたいと思います。

星合:いきなりP2Pとは何だという議論をしてもわかりにくいと思いますので、3つの世代にわけてインターネットの歴史を振り返ってみたいと思います。
インターネットの歴史を振り返ることによってP2Pという技術がどういう風に現れてきているかということがお伝えできればと思っています。

第一世代では、ブローカ型配信モデルです。
具体的にどういうことかと言いますと、何らかの配信したい情報を、一旦ブローカ、中継者にあたるサーバーに蓄えます。で、サーバーから視聴者に適宜送るというのがブローカ型配信モデルです。要は情報を配信したいという人と、情報が欲しいという人との間を繋ぐ仲介者が存在するものです。例としましては、80年代に登場しましたパソコン通信です。このモデルで何が問題になるかというと、パソコン通信会社は莫大な設備投資が必要でした。基本的には十億から数十億のサーバーの投資をしないと、提供者のコンテンツを保存することもできませんし、帯域を確保することもできないという、非常にコストのかかったビジネスモデルでした。

これに対して、1992年にワールドワイドウェブ(www)、これは私が説明するまでもなく皆さんよくご存知のウェブの技術が登場いたしました。これのいいところは、例えばホームページを作るということでいうと、何らかの情報をアナウンスしたいという人が、先ほどのブローカ型配信モデルであった、配信のための仲介者という存在を必要としなくても、自らが情報を発信することが出来る様になったということです。
一方、視聴者側から見ると、例えば今ですとインターネットエクスプローラー(IE)とかネットスケープナビゲーターなどのブラウザを使うことによって、直接自分の欲しい情報を見ることが出来るというわけです。
このような仲介者がいなくても情報の配信を可能とする技術、すなわちブローカレス配信モデルを実現した技術がwwwであると言えます。
wwwの登場で誰もが情報発信をすることが可能になったんですが、その反面、コンテンツがあふれ出て、結局自分の欲しい情報を見つけるのが困難になったわけです。どんなに自分が情報発信することが可能でも、自分の欲しい情報を見つけることができなければ、これは宝の持ち腐れになってしまうわけです。そういうわけで、yahooやgooなどの検索サービスが登場することとなりました。先ほどのパソコン通信では情報そのものをブローカであるサーバーに蓄えたんですが、この検索サービスでは情報のある場所、いわゆるURLだけを蓄えています。コンテンツそのもの自身は、配信者自身が持つという形態をとったわけです。爆発的に広がり収拾のつかなくなったコンテンツを、検索エンジンが解決したわけです。
これをブローカ型探索モデルといいます。要は情報の探索までは仲介者を介すことによって見つけることができ、それ以降はまさにブローカレスで情報を配信することができるモデルです。こういう形が皆さんよくご存知の世界、インターネットを利用する方の典型的な利用形態というのはこのブローカー型探索モデルなわけです。

これに対して、今P2Pという言葉がマスコミを含めて色々取り上げられているんですが、このP2Pが目指している第三世代の世界というのは、その情報の配信だけでなく、情報の探索、場合によってはグルーピングまで仲介者を使わずにやってしまおうという世界です。これによって情報の探索、配信、グルーピングをすべて情報提供者、もしくは参加者で実現する仕組み、ビジネスモデルがP2Pの目指す世界です。

具体的に何が出来るかというと、様々な属性に基づいて、例えば“野球が好きだ”とか、そういうもので構いません。その属性に基づいて、同好の志を発見し、それらとグループを動的に形成し、グループの中で情報やサービスを共有するということを、仲介者の存在なく、まさに参加者のみで実現する技術がP2Pです。これによって誰にも必要以上に管理されない、自由、平等、対等で、自立的なネットワーク社会を構築することが出来るわけです。すなわちP2Pの本質というのは、仲介者レスである、つまりブローカレスであるということです。
どのようなメリットがあるかというと、ネットワークの場というものを第三者が運営するのではなくて、参加者、サービスを提供しようとする人、受けようとする人自らが、ボランティアとして場を運営してゆきます。そうすると、もし場を運営している人が辞めた場合でも、停滞してしまうのではなくて、残されたメンバーが場を自立的に再構築することによって運営を継続することが出来ます。
これを従来のサーバー型でやりますと、サーバーがダウンした時点で、すべてのサービスが停止してしまうという問題が起きてしまうのですが、そういうことが起きなくなるというメリットがあります。

もう一つは、場の運営自身を参加者がボランティアとして行いますので、場への参加が自立的である、すなわち強制されませんという、個々のプライバシーが最大限に尊重されるのです。そういう意味で地域コミュニティへの活動を強制するモデルでなくて、希望する人だけが入り、また、そこが自分に向かない場であれば自立的に退去することができるという世界における、一種のコミュニケーションツールとしてP2Pは威力を発揮することができると考えております。
その他のメリットとしては、まず低コスト化というものがあります。サーバー型ですと、ユーザーが増えると、サーバーを増やしてゆかなければならなく、膨大な設備投資がかかってゆきますが、P2Pですと、参加者の端末を使って場を運営するので、低コストで同じサービスが運営できるようになります。
それから、先ほども申し上げましたが、個々の参加が自由であるため、メンバーが抜けたりしてもそこでサーバーダウンが起きませんので、非常に柔軟性かつ耐故障性に優れているといえます。

ウェブとP2Pを比べさせていただきました。簡単にまとめさせていただいたので、本質を突いているかというと疑問も残りますが、一つの見方としてこういう定義も出来るのではないかと思います。基本的にウェブは情報を発信することを目的としたコミュニケーションツールであると考えることができます。すなわち、一方、かつ発信型のコミュニケーションツールであると。それに対してP2Pは、参加型です。実行しようとした方が参加し、自らの端末を使用して供出することによって、みんなと場を運営するという意味で、参加型のコミュニケーションツールであると分類することが出来ると思います。

ざっと説明しましたが、以上でございます。

西山:ありがとうございます。星合さんからP2Pの概略的な説明をしていただきました。P2Pの考え方や可能性を示していただいたわけですけれども、地域や大学などの組織でネットワークを構築、管理する上で、従来のネットワーク技術の課題にP2Pの技術がどのように答えられるのかという問いかけがあります。

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