――9月に地場産業振興センターで開いた展示会で、始めて大勢の人の前で八丁撚糸機を動かしたんですよね。
藤井 前回のあすへの遺産の出版記念展示の時は県庁でやったんだけど、その時に持って行ったのと、今回のは違うんだよね。
――あの撚糸機は紫にあったやつですよね。手回しのハンドルを取り付けたって、言ってましたもんね。
(前回の展示の写真を見て)
藤井 それで、こっちのが分かるかな。輪っかの部分に掛かっている釣瓶、よく見ると広がってないでしょ?
――あ、ほんとだ。
藤井 それがね、釣瓶が重なっていると重くて回んないんだよ。
――(今回の展示の写真を見て)……これは揃ってる。
藤井 直したん。広がってるだろ。これも40本錘がある機械だから。重なったままだと重くて回らないんだよ。
――幅を見ると前回のは半分くらいですものね。
藤井 そうですよ。それで森秀さんの工場で整備して広がったわけ。それで地場産に運んだらまた駄目さ。木でできてるからね、ちょっとでも狂うと上手くいかないんだよ。それで、10時くらいからお昼ぐらいまでやって、やっとこ広がるようになった。で、この八丁を回すことは予定に組んであったから、これで大丈夫だと私は思ったん。それがお昼ちょっと過ぎくらいだったかな。お昼なんて心配で食べられやしなかったよ。
(一同笑)
藤井 で、広がってきたからこれで大丈夫だと思って。タイムスの記者にさ、大丈夫ですよ〜って。やっとこ軽く回るようになったのよ。それを記者が記事にしたわけなんさ。
――だからか。あの輪っかの部分が少し斜めになってたのは、釣瓶がちゃんと広がるようにだったんだ。
藤井 いい按配でやれば楽に回るってわけ。
――現に子供だって簡単に回していましたからね。
藤井 錘は40本だったけど、30本だけ撚る糸を掛けて10本は空にしていたん。糸も無いんだから。あれは森秀のいらない糸を持ってきてやってるんだから。
で、聞いたらね、あの八丁は京式の錘を加工したんだっていってたな。今でも2種類あるんだよ。桐生式と京式。錘先が尖っているのが桐生式で尖っていないのが京式なの。京式ってのはあんまり回転させないんだよ。京式っていうのは大きなシボができる。で、森秀さんはおっきいシボが欲しいんだよ。だからこの京式の錘をヤスリで細めたんさね。
――京式のやつを改良してたわけですね。
(1枚の写真を取り出し)
藤井 地場産で八丁撚糸機の実演した時に撮影してくれた近所の人が、よく撮れたからって額に入れて持ってきてくれたん。
――飾りましょうよ、どこかに。
藤井 そうか、飾るかねえ。
――今、桐生にある八丁撚糸の機械って何台くらいあるんですか?
藤井 実際使えるんは2、3台じゃないんかね。あとはもう全部駄目。
――何もしないとすぐになくなっちゃいますね。結局、これを活かす知恵を身に付ければ良いわけですよね。
藤井 繊維工業試験場の空いてる部屋に糸繰り機も修理してモーターくっ付けて置いてあるん。他にも昔の八丁撚糸機なんかも預けてあるんだけど、あれは相当手直ししなくちゃなんない。最終的には「織物組合に寄付しても結構ですよ」とは言ってありますけどね。どうなっちゃてるかわからないですけど。
――やっぱり機械を見てればどこを直せばいいか分かるものなんですか?
藤井 分かりますよ。それで飯食ってたんだもん(笑)。どこがどうなってるっていうのはちょっと見れば分かりますよ。
――じゃぁ2、3台しかない動く八丁も増やすこともできますね。 |