――それではまず湯通しと湯のしについて教えてください。
上岡 湯通しというのはお湯を通して糊を落とし、撚りを寄せるものです。湯のしは寄せた撚りを必要な幅にまで広げることですね。
吉田 湯通しはいわゆるシボ取りとも言います。ものによっては湯通ししないと仕上がらない反物もあるんです。
上岡 そうですね。機屋さんから来た段階では、織り目がグニャグニャでまっすぐじゃないものもあるんですよ。そのままだと仕立てたりするときに大変なんで、うちで湯通しして整理し直すわけです。
――お湯の中に通すというのは、具体的にはどのようにするんですか?
上岡 では実際にシボ取りをやってみましょうか。(以下、実演しながら)
――これはプラスチック製ですよね?
上岡 はい。昔はタライ桶があったんですけど、今はプラスチックの桶でやっています。まず、ここにお湯を張って酢酸を入れます。
――なるほど酢酸を使っているんですね。
上岡 そうしたらこのように布をお湯に通すんです。
…これでだいぶ縮んできたでしょう。この両端の重なった2枚がうまく合わないと、湯のしをしたときに幅が揃わないんです。そこで、このように手で引っ張ったりしながら合わせていくんですね。
…だいぶ幅が寄ってきました。そしたら次に濯ぐわけです。そして水を切るんですが、今は洗濯機の脱水で行っています。その後干して完全に乾いてから湯のし整理に入るという手順です。
――もとの大きさと比べるとだいぶ縮みますね。3分の2ぐらいになっちゃうんですね。乾かした後というはどうなるんでしょう?これ以上縮まないものなんですか?
上岡 いえ、縮みますね。糸の撚りの強さが関係してくるんですよ。
――どのくらいで乾くんですか?
上岡 季節によって違いますが、今のように夏だと、天気がよければ3時間ぐらいで乾いちゃいますよ。
吉田 昔はね、この段階まで全部機屋でやっていまして、その後に干したものを持ってきて整理してもらっていたんです。
上岡 でも、もうほとんどの機屋はシボ取りしないでしょう。お召しの場合は特にね。だからみんなうちに来ちゃうんですよ。それでいっぱい干すために竿が必要で、こんなにたくさん天井にかかっているんです(笑)。
――本当だ、すごい数の竿ですね。今の桐生には、湯のし屋さんは何軒くらい残っているんでしょうか?
上岡 えーと、そうですね、あっても5軒くらいでしょうか。帯の整理屋さんというのもありますけど、それはそれで別ですからね。
――そうすると上岡さんのところは着尺専門ですか?
上岡 ええ、ほとんどお召し専門ですね。
――反物によって、これは湯のしだけで十分だとか、これは湯通しだけで良いとか、そういう違いはあるんですか?
上岡 ありますが、一応どっちもやります。 |