(布がはりつけてあったりメモをしてあるノートを開いて)
――これは当時のものなんですか?
小平 そう、本当のお召しなの。もう40年以上経つね。
吉田 縫い取りが盛んな頃さ。
――触ると「きゅっ」て感じがします。
小平 うん、絹鳴りだね。違うんだよ、触った感触が。
――これはいつ頃のものなんですか?
小平 20年くらい前のやつだね。
――私たちと同い年くらいだね。手触りがいい。
小平 うん、やっぱり絹だからね。
吉田 絹糸になると柔らかいけどね。その前の段階じゃ生糸って言って、そこから作っていくんだよ。
小平 これは森秀で織ったものだね。
――すごーい。透けてる!!
小平 ほら、「よこよろけ」って言うんだよ。筬でこう織るんだよね。
――吉田さんも当時のものって、一つ一つ覚えてらっしゃいますか?
吉田 それはほとんど分かるよ。
――へえーすごい。
小平 そりゃ知ってるよ。やってた人なんだから(笑)。
――今も織るときに参考になさったりするんですか?
小平 こういうものは頭で考え出すんだよね。
吉田 こっちの花が透けてるのは、横絽っていうんだよ。これは見た通り、夏の着物。
(ノートをめくっていき)
――これは何ですか?
吉田 織り方の設計図。基本設計。
――んー全然分からない。設計図って言われても、どこがどう設計なのか…。
小平 ここまで勉強するのは大変だけど、これが分からなきゃ織れないんだからね。
――この中でよく売れたもの、たくさん織ったものってどれですか?
小平 森秀のこれぐらいだな、秀美ってやつでね。
――織っていて、これは売れそうだなって分かるんですか?
小平 いや、市場に出てみてからだね。
――やっぱり出てみないと、分からないものなんですか。
小平 これはいい!!って感じても、あんまり売れないこともあるよ。
吉田 紋紙作って一生懸命織っても、買ってくれないときもある。 |