桐生お召しに関わる職人たち
桐生お召しと職人の系譜
桐生市老人クラブ連合会/NPO法人桐生地域情報ネットワーク

(何枚かの紗織の帯を出して広げながら)

――ところで一年の中でお忙しい時期は、いつくらいなんですか?

小平 それはほら、夏だよね。

――これ全部夏物なんですか?

小平 そう。帯なんだよね。

吉田 みんな小平さんのところで作ってるんだよ。

小平 これは前に織ったやつ。もともとはもっと長いんだけど、一度切ったものだから。若いもんが、浴衣を着るときにしめますね。

――ああー。浴衣かーカワイイ。

小平 紗織って言ってね。夏物だから涼しいように、組織が荒くて、透けて風が通るようになってるんだよ。森秀のときもこういう紗織をやってたよ。こっちの柄は木立なんだけど、年寄りが着るのに良いんだよな。だいたい帯ってのは、締めたとき見えるように柄が右へ寄ってるもんなんだよ。まあ今織っているのは、こういうものだね。

――これさっきの色違いのやつ。かわいいですねー。

小平 それは1週間ぐらい前に織った。

吉田奥さん ねえ、ずいぶん凝ってますよね。5色も使って。

小平 うん、5色。

――もとは紋紙で全部やるんですか?

小平 そう、全部紋紙。

吉田 紋紙の穴がこの模様を操作してるわけ。ちゃんと専門家がいてね。そこで、この20メートルもある紋紙を作ってもらうんだよ。

小平 それを自分の家に持って来てかけて、織っていくの。

――星図も紋紙もコンピューターで作るように変わりましたからね。

小平 うちで使っている紋紙は今でも昔ながらの方法だよ。

――あ、そうなんですか。

小平 だからこれは、ピアノマシンで切ったんだよ。紋紙はあとで見せてあげるね。

――やった!ありがとうございます!実は見たことないんです。

小平 そうなの?桐生にいて、それも珍しいね。
(一同笑)

吉田 出身はどちら?

――青森と高崎と静岡です。なかなか見れる機会なんてありませんからね。

小平 そうだいね。


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はじめに
桐生お召しから龍村織物専属デザイナーへ
“柄”を生み出す演奏家
桐生で唯一の絹専門の染め屋
今もなお現役で筆を握る図案作家
2人の整経屋からみた現実と未来
高速化に対応して世界屈指の職人へ
桐生織物の職人たち
機械直しから紗織の名人へ
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入社時から全盛期への思い出
小平さんの帯作り
森秀機械直しから紗織りの名人へ
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シンポジウム
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ちょっと一息/コラム
お召しチャート
編集後記

 

この日は吉田さんの奥さん(写真右)にも参加頂いた。

小平さんが作られた帯を見せてもらう学生達。