桐生お召しに関わる職人たち
桐生お召しと職人の系譜
桐生市老人クラブ連合会/NPO法人桐生地域情報ネットワーク

――今の仕事場を見せて頂きたいんですけど。

小平 そうだね。織機を見てもらったほうが分かりやすいな。

吉田 ここんちの機械は昔ながらの織機で今も稼働してるんだから貴重品だよ。

――今までも色々調べてきたんですが、昔の様子は織機が今と違うので、結局分からないことが多かったんですよ。

小平 そうだよね。今のレピアとかだとガッシャンガッシャンなんていわないからね。まあ、うちの織機を見ていってくださいよ。
(織りの実演・織機を見ながら)

小平 簡単な仕組みなんだけど、口先じゃなかなか分かりづらいやね。でも見ちゃえば「なんだ、こんなもんか」ってね。

吉田 もう簡単よ。原始的なんだから。

小平 要は綜絖が上がって経糸をあげて、そこに緯糸が通っていくって、そんだけのことなんだもん。でも初めて見たんじゃ、あれかね。なんとなく分かるかなってぐらいなもんかね。まあ、織機があってジャカードがあってタマがあって、それで機織りがいて織るんだってことよ。

――この織機はどれくらい使ってるんですか?

小平 んーと、昭和35年製。

――すごい。もう40年以上現役で使っているんですね。

吉田 珍しいですよ。森秀参考館の紫で見ました?あそこにはこれがないんですよ。もっと広幅なものをコンピューターを使ってやっていますけどね。

小平 結局ね、紋紙の穴の開いてるところが柄になってくのよ。経糸が1本1本上がったり下がったりして、そこに緯糸が入っていくと柄になる。

吉田 この筬の部分見てみて。経糸を見てみると全体は下りてるんだけど、一部分だけ上がってるでしょ?だから模様ができるというわけ。

小平 タマから引っ張ってきた経糸を綜絖に通して……。 

――え、もしかして全部手作業なんですか?

小平 そう、1本1本手でやるの。経糸を通す穴を綜絖って言うのね。で、これに糸を通すのが引き込み屋。今はもう機拵え兼引き込み屋っていうんだけども。
 これ全体を架物っていって、この糸も引っ込んで取る。出来たものを取り付けて、タマも取り付けて紋紙をかけて織りつけるわけだよね。

――紋紙って今でも作ってもらえるんですか?

小平 うん、大丈夫だよ。これつけて持って来てくれるから、うちで織りつけられるわけだし。

――紋紙を使っているっていうのも珍しいですよね。

吉田 これがね、今じゃ1枚が何円くらいするのかな?穴を開けてそれを編んで、紋紙だけで相当な経費がいるんですよ。

――1枚いくらで決まっているんですね。

吉田 星図を見て、横一列に黒と赤の柄が出るとしますよね。そうすると黒で1枚、赤で2枚、地を織るのが入るから3枚必要になるわけです。

――複雑になればなるほど、お金がかかるんですね。

吉田 星図なんて技術料がかかるけど、売れるか売れないかは作ってみないと分からないから難しいよね。

――耳の糸は別に掛かっていますけど、特別なものなんですか?

小平 うん、そう。耳糸専門に作ってあるんだよ。いろんな糸があるけれど、これが摩擦に強くてね。

――これで端っこのところを止めるわけですね。

小平 まぁ、織物によっては入れないものもあるけどさ。


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はじめに
桐生お召しから龍村織物専属デザイナーへ
“柄”を生み出す演奏家
桐生で唯一の絹専門の染め屋
今もなお現役で筆を握る図案作家
2人の整経屋からみた現実と未来
高速化に対応して世界屈指の職人へ
桐生織物の職人たち
機械直しから紗織の名人へ
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小平さんの帯作り
森秀機械直しから紗織りの名人へ
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意外な発見
全盛期を支えたお召し織物の稼ぎ頭
経糸と共に繋いだ夫婦の絆
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桐生の織物産業を陰で支える
あの光景を再び。桐生で八丁撚糸機を動かした立役者
シンポジウム
職人が語る桐生お召しの系譜

ちょっと一息/コラム
お召しチャート
編集後記

 

工場では実際に機械を動かして頂いた。小平さんのところにあるのは当時から活躍する織機である。

機械直しだった小平さんも現在は全ての作業をご夫婦でやられている。