――紋紙は穴が開いているか、開いていないかしかないわけですよね?
小平 そうだよ。紋紙がジャカードを通ると、穴の開いているところには横針が入っていくわけ。逆に穴の開いてないところは横針が紋紙にあたって押し戻されて、その横針によって縦針も押されて残るんだね。そうするとナイフってのが上下して、縦針が引っ掛かるんだよ。ナイフが上がれば経糸も上がるっていう仕組みなの。
――この柄を出すのにこれだけの紋紙が必要なんですね。1マスで2側分なんですか?
小平 一の手、二の手っていうのがあるんだよ。必ず奇数偶数で使われてて、2本の針でやるの。同じ番号の紋紙が2枚あるのは、柄の紋紙で1枚、地を織る紋紙で1枚切って、2つで織ってるってわけだ。
――星図を見ると、これも手で塗ってますよね?
小平 そうだよ。みんな手でやるの。地、紋、地、紋を白、赤、白、赤で表しているんだ。だんだん専門的になってきたね。ここまで質問されるとは思わなかったなあ。こんなに研究して来るとは、たいしたもんだよ。組織の方が面白いからな。いくら相手になってやってもいい(笑)。
――織機に付いている、この白いテープはなんですか?
小平 これはね、決まっただけの尺が来ると止まる装置。1本のテープに4箇所止めるところが入ってて、織機が動くと一緒に回ってね。紋または地に替えるときは電気回路を工夫した装置で織機が止まり紋紙を掛け替えます。これ自分で考え出してくっつけたんですよ。
普通はちょっとでも見逃しちゃうと織り過ぎちゃうんだよ。そうなると織ったのをほぐして織り直さないといけないんでね。俺、この装置で特許取ろうと思ったんだけど、申請すんのに金がかかるようになって止めたんだいね。
――今はどのようなものを織られてるんですか?
小平 紗の帯。
織機に装置がついてるんだけど、それで糸がくっついていて、穴が開いたように織れるわけ。ここに2本の糸があるだろ。この経糸が左へ出た時に緯糸が入るんだよ、ほら、今左へ出たろ?で、同じ糸がその次は右へ出るん。右、左、右、左って交互にいくの。これが紗織って言うんだよね。だから、横に出た糸が5本ならそのまま5本行っちゃうわけ。右行って5本、左行って5本って、そういう風に組織が織れているわけ。
吉田 分かってるかな?
(一同笑)
小平 「言われてみると、そうなんかなあ」って感じでしょ。自分でやってみれば分かるんだけどな。
穴開けるときだけよじってるんだよね。今使っているのを片振るいっていうんだけど、森秀には両振るいもあったの。それはこの部分の仕掛けが上にもあるんだよ。そうすると目が締まって、へばんないもの、丈夫なもんができるんだね。それにこれは片方だけだと横滑りするときがあるんだいね。
――この釣り下がっている装置はなんていうんですか?
小平 これは三紋体っていうの。3本の針が動いて一つの組織になってるんだよ。だから一つの筬に最低三本は経糸が通ってる。普通の織物ってのは一紋体だから、一つの筬に1本の経糸なんだけどね。
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