――ただいまより、シンポジウム「職人が語る桐生お召しの系譜」を始めさせていただきます。まず始めに、桐生市老人クラブ連合会出版事業部長、石川祐策さんにご挨拶を賜りたいと思います。
石川 皆さんこんにちは。ただいまご紹介をいただきました石川です。本日は桐生市老人クラブ連合会長、峰岸康治が皆様にご挨拶すべきなのですが、公務のため出張中でございますので、私が替わりましてご挨拶をさせていただきます。
平成15年度も老人クラブ連合会と、NPO法人桐生地域情報ネットワークとで若い世代と我々老人世代が協力しながら、色々と事業をやってまいりました。平成14年度に、「新あすへの遺産 桐生織物と撚糸用水車の記憶」という本を発刊致しました。
今年の3月下旬に群馬県庁舎のロビーでこれと同規模の展示を開催しましたところ、県庁の幹部や色々な方々、また周辺の織物や生糸に関する職業に従事された方々が多数来場されまして大変感銘を受けたという話を色々聞きました。それなら、やはり、桐生でも開催すべきではないかという経緯で始まったのが、今回の展示発表会です。
先日も色々と仲間内で話を聞きましたが、あのときよりも展示内容がバラエティに富んでおり、さらにボリュームもあって、私共も、とてもよい展示会が開催できたと考えてございます。
また、「新あすへの遺産」のプロジェクトも、平成15年度事業でも「桐生お召しと職人の系譜」と題し、その後も継続しております。桐生の文化の発祥の根源である織物、そういうところを通じて桐生の遺伝子を、日本全国はもとよりインターネットを通じて全世界にPRしていくというのが我々の意気込みです。
この間も群馬大学工学部の根津先生や留学生が見えまして、非常に感心して頂きました。前橋出身の写真家吉田敬子氏ののこぎり屋根工場の写真を見まして、ぜひともそこへ行ってみたいという話もありました。外国の方もなかなか興味を持って頂けているようです。
それともうひとつ、我々老人クラブのグループとして、去年から続く今回の仕事について一番いいなと感じていることを紹介したいと思います。
実はこの仕事を通じてこれをもう少しPRしなくちゃならないというわけで、今年の8月ですが、地元の公民館の高齢者学級を通じて、こういう経過を踏まえて、私が約1時間45分、生涯青春というテーマで講演しました。その中の結びで、私が感じ取った「高齢者像の変化」というものについてお話したいと思います。
今までの高齢者というとどうしても、弱者、支えられる人、脇役といったイメージがあり、更にはゲートボール、温泉旅行、囲碁、将棋、和服、割烹着姿、質素倹約そして第一線からの完全引退というのが多かったわけですが、私はそうではないと言いました。普通、我々を「シルバー世代」と呼びますが、私はその上に新を付けて、「新・シルバー世代」と名付けました。こちらですとイキイキ、ハツラツとした主役というイメージで、今までの高齢者に比べて、テニス、海外旅行、英会話、パソコン教室、その他にも若々しくファッショナブル、自己実現、社会貢献、そして今までの経験や知恵の伝承の担い手になるのではないかと思っています。
特に取材のときなどは、高齢者のところに孫ぐらいの年齢の人達が行きます。しかも、ただ行って話を聞くだけじゃなくて、パソコンやビデオカメラなどを使ってすぐ見せてもらえるわけです。そのときの取材先の方たちのニコッとした顔、これが忘れられないと取材する側でも言っております。こういうことはとてもすばらしいと思います。この平成15年度事業「桐生お召しと職人の系譜」によって、色々な文化を伝承し、次の世代に残していきたいと思います。
これよりシンポジウムを開催致しますが、皆様のご意見等を反映してより良いものになるようにしていきたいと思いますので、ご協力のほど何卒宜しくお願いします。ありがとうございました。
――それでは次に、これから始まるシンポジウムのパネリストの方々について、簡単にご紹介させて頂きたいと思います。
まず始めに、司会の長田克比古さんです。長田さんはNPO法人桐生地域情報ネットワークの理事でもありまして、前年度に続き今年度事業の「新あすへの遺産」のディレクターを担当しております。
次に吉田邦雄さんです。吉田さんは市老連常任理事、第7区白寿会会長を勤められました。以前は森秀織物に長年勤務されており、当時は常務としてご活躍されていました。生糸の段階から、撚糸、染め、織りとすべての工程を把握しており、織物について熟知されているマイスターと言って宜しいでしょう。本年度の事業では、取材のコーディネイトを担当して頂いております。
次に藤井義雄さんです。藤井さんは揚撚りの撚糸をやっておりました方で、前回の「新あすへの遺産」にて取材させていただきました。今回も色々とお話を伺いたいと思います。
次に上岡健城さんです。上岡さんは現役の整理屋さんです。整理屋というのはお召しを出荷する前に湯のしをして、商品価値を高める大切な仕事です。
次に橋本廣一さんです。橋本さんは今回の事業では、染め屋さんとしてご紹介させて頂きます。橋本さんも現役でお仕事されています。
最後に岩倉カツさん。岩倉さんは、森秀織物で機織工をやってらっしゃった方なのですが、当時、一番の稼ぎ頭だったと伺っております。
それでは長田さん、よろしくお願いします。
長田 早速始めたいと思います。
街というのは多くの人が生活し続けて、作られております。街というのはまさしく自然であり、歴史であり、技術であり、生き方そのものです。そして我々はこの住んでいる街を次世代に引き継がなければならないわけですが、次世代に引き継ぐ街を作るためには、街を知って、街を残して、街を伝え続けることが必要だと考えています。
それではこの桐生はどういう街なのか。それは自他共に認められるように、織物の街でした。そして現在もやはり織物の街です。この織物の街を作るまでに至った織物自体の製造工程には、実に多くの過程があり、その工程ごとに職人さんがいらっしゃいます。
この「織物の街/桐生」を知ることは、織物に携わった多くの方々の生の声を聞いて、その皆さんの生き方を知ること、それが桐生の街を知ることになると私たちは考えています。
織物に携わった人達のお話を伺うにしても、織物そのものについては非常に工程が多く、どこから話を伺えば良いかわからないものです。今回は桐生の織物の代表とされる、先染め織物を取り上げ、お召し織物について関わっていた職人さんたちにお話を聞こうということで、本日のシンポジウムとなりました。 |