桐生お召しに関わる職人たち
桐生お召しと職人の系譜
桐生市老人クラブ連合会/NPO法人桐生地域情報ネットワーク

長田 吉田さんにお伺いしたいのですが、戦前と戦後では使った糸の太さが違ったということを聞いたのですが、昔は細かったということですか?

吉田 戦前は森秀では14中の糸しか使っていませんでしたから太い糸のことはわかりません。お召しに使う糸は、経糸、緯糸とも何本かの糸を一つに揃えて作るものです。例えば14中のものを3本とか。
 織り上がったときの感覚も糸の太さで変わってきます。細い糸を揃えて作った糸の方が商品になったときになめらかなんです。

長田 細い糸というと具体的にはどういうことですか?

吉田 例えば42デニールの糸を作るときに、21中を2本使うのと、14中を3本使うのと、両方とも数字的には42になるわけです。しかし、同じ42でも太いものを2本使ったものよりも細い糸を3本にした方のが良いものができました。
 今は亡くなられましたが、本町に住んでいた奥様が私どものお召しのファンでして、時々着ていただきました。戦後のあるときその奥様が、「どこか昔のと違うのね」と言われまして、私はそんなことはないと思っていたのですが、色々調べたところ以前3本で撚った糸を、2本で撚ったものに変えたのが原因らしいということを突き止めました。
 戦後は14中という糸が無かったので仕方がなかったのですが、原因を調べるときに協力していただいた群馬大学の先生に色々とお話を聞き、前の製品に近づけることができました。

長田 橋本さん、今でも染色をなさっていますが、糸の太さはどの程度のものが多いですか?

橋本 そうですね、21中〜27中が多いです。14中というものはなく、現在では21中が一番いい糸ですね。

長田 さて、ここで休憩を入れたいと思います。後ろに八丁撚糸機や水車の模型がありますので、是非それらを見学してみてください。


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はじめに
桐生お召しから龍村織物専属デザイナーへ
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桐生織物の職人たち
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シンポジウム 職人が語る桐生お召しの系譜
職人が語る桐生お召しの系譜
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お召しを製品にする最終工程
森秀織物ナンバーワンの機織り
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戦前と戦後のお召しの違い
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第一部ではお召しの工程を完成から遡って皆さんに語って頂いた。