桐生お召しに関わる職人たち
桐生お召しと職人の系譜
桐生市老人クラブ連合会/NPO法人桐生地域情報ネットワーク

吉田 経糸が上がった時に緯糸を通す道具がシャトル。日本語では杼と言うね。

小平 このシャトルに付いているのは猫の毛。

――えー!!猫!!

小平 かわいそうだろう(笑)。

――あはは。かわいそうだろうって……。なんでシャトルの内側に毛が付いているんですか?

小平 空回りしないようにだね。シャトルがバチンバチンって左右に行ったり来たりしているうちに、中にある管が空回りすると糸がこぼれてきちゃって、たるみができるんだよ。それを毛が抑えてくれるの。

――なんで猫の毛なんですか?

小平 まあ、なんでだろね、一番良いんだよね。でも最近は人造猫毛っていう、人造毛を使ってるよ。

――やっぱり違うんですか?

小平 全然違うね。本物の方がよく言う事を聞いてくれる。

――シャトルが収まるところが4つずつ左右に付いてますね。最高でどれくらい付くものなんですか?

吉田 12くらいのありましたよね。

小平 こっちの杼が向こうにいったらここが空くでしょ。そしたら向こうから次の杼がここにくる。

――じゃあ1か所空いてるとこがあれば行けるんだから、左右で12ずつなら、数字の上では23本も使えるってことになるのか。

小平 まあ、ここいらでやってるのは、多くても6本とか8本だね。普通は3本ぐらいしか使ってないよ。将棋の駒を動かすように、これも使い様によっては空いてるところにいけば良いわけだから、いくつも持っていき方はあるんさね。でもそんなに複雑なものを織ることはないよ。


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はじめに
桐生お召しから龍村織物専属デザイナーへ
“柄”を生み出す演奏家
桐生で唯一の絹専門の染め屋
今もなお現役で筆を握る図案作家
2人の整経屋からみた現実と未来
高速化に対応して世界屈指の職人へ
桐生織物の職人たち
機械直しから紗織の名人へ
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入社時から全盛期への思い出
小平さんの帯作り
森秀機械直しから紗織りの名人へ
シャトルに付いた毛の正体
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意外な発見
全盛期を支えたお召し織物の稼ぎ頭
経糸と共に繋いだ夫婦の絆
商品の価値を決める最終段階
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あの光景を再び。桐生で八丁撚糸機を動かした立役者
シンポジウム
職人が語る桐生お召しの系譜

ちょっと一息/コラム
お召しチャート
編集後記

 

シャトルの糸が無くなって新しい管を取り付けている。

工場内はリズム良く刻まれた織機の音に包まれていた。