――当時は普段でも着物を着てらっしゃったんですか?
奥さん 私たちが実際着物着たのは、結婚式や葬式はもちろん、子供が七五三だとかお祝い事のときでしたね。その都度新しいものを作って親子とも着た時代ですよ。今の人は子供は貸衣装で済ませて、親は洋服のままでも平気みたいだけど。
――当時は街中を、着物を着ている人が歩いていたりしたんですか?
上岡 いましたよ。
奥さん お年寄りはほとんど着物だったし、若くてもちょっと気の利いた人なんかは、お正月の年始参りのときに着たりしてね。
――旅館の女将さんとかって、いつも着物着ているイメージですよね。
奥さん ああいう人は商売上、身なりで自分のところの格も違ってくるでしょうしね。やっぱりただ着れば良いってものじゃなくて、髪だってセットしなくちゃいけないし、品があって良いものですよ。
――あと、おばあちゃんがお祝い事とかお正月の時に着るとか。
奥さん そうでしょう。今だってお年寄りは、例えば遠い親戚とかお孫さんの結婚式でも着物で出ますもんね。まあいろいろな考え方の違いで、着物は高くつくからつまんないって人もいますけど、お祝い事の席とかで着物着た人を見ると、いいなって思いますね。この前も七五三してる人を見かけてね。若いお母さんなのに、ちゃんと親子揃って支度していて、ああやっぱりこういときは着物が一番だよなって思いましたもの。
――あの、以前から何となくしかわかってなかったんですが、要はシボっていうのは、この布の表面のぼこぼこのことを言うんですか?
上岡 そう。これは細かいもの。撚りの工程によって細かくもなれば、ざらざらにもなります。
奥さん 大きいシボと小さいシボがあるんですよ。
上岡 一様に言えないんですよ。シボによってそこの風合いが出るんだから。確かに分かりにくいかもね。そこんちによって違ってきちゃうしね。
――色々な風合いがあるんですね。
上岡 そうなんですよ。シボが大きい方が良いって言ううちもあるし、細かい方が良いって言うところもあるし、それがいわゆる企業秘密でね。
――シボが大きいと、こちらでの作業も長くかかったりするんですか?
上岡 そうですね。
――どっちが着易いものですかね?
上岡 それは好みだけど。私は細かいほうが、着てて柔らかいから良いかな。これなんかは残糸って言って残った糸で作ったもの。だから糸自体の色が違うんですね。
――ほんとだ。いろんな色が入ってますね。
上岡 これだって着らんないことはないからね。
――むしろ良い味になってるっていうか。
上岡 そうですね。
――きれ〜い。光が当たると全然違って見えますよ。 |