桐生お召しに関わる職人たち
桐生お召しと職人の系譜
桐生市老人クラブ連合会/NPO法人桐生地域情報ネットワーク

――健城っていうお名前、こういう字を書かれるんですね。かっこいいなあ。

上岡 これねえ、名前負けするってのは考えなかったんだろうかね(笑)。要は姓が上岡でしょ。だから岡の上に城を建てるっていう意味なんだいね。

原澤 城を建てるかあ。すばらしいお名前ですね。 

――名前負けなんてしてないですよ。前回のインタビュー資料を読んで、さっきの指のお話とか、びっくりしましてね。それで……ちょっと手を見せてもらえればな〜と。

上岡 良いですよ(笑)。

――(上岡さんの手を触りながら)なんかすごい、大きいですね。

奥さん 今はもう、お召しの仕事をあんまりしてないし、ほとんど機械でやってるからね。昔はもっと指が内側に曲がっちゃってて、変形してましたよ。

――じゃあ、全盛期の頃はもっと。

奥さん こんなもんじゃなかったですよ。先の方が膨らんで、おだんごみたいな形になってね。

上岡 それこそ、唐揚げも平気だったって頃ですよ(笑)。今ではその皮も全部取れてきたけど。

――それと、胸板がすごく逞しいですね。伸ばすときに足と胸の力を使うからですか?

上岡 そうですね。そこに力が入ります。あくまでも指は抑えている程度ですし。

奥さん 若い頃はもっと太っていて、大きな体だったんですよ。病気になったりで、お医者さんから痩せてくださいって言われ続けたもんだから、これだけになったんね。 

――すごい、ボディビルダーみたいだ。確かに毎日鍛えているのと同じですもんね(笑)。そうやってこの作業に慣れて、使いこなせるまでには何年くらいかかりましたか?

上岡 それほどかかるもんでもないけど、反物の耳を揃えるのが難しいね。指で抑えて膝をうまく使ってやるんですよ。

奥さん そう。やっぱりそこが一番大変で辛いところだね。要するに丸めた時に反物の端が平にならないんですよ。特にお召しの場合は、機屋さんから届いた時点では大概クシュクシュになってて、それをこの段階にまでもってくるんだから、きれいにできるようになるには年月がかかりますよ。呉服屋に持っていって耳が揃ってないと、見た目が悪いからって不良品になっちゃうし、半端な仕事じゃ意味ないですからね。5年くらいは必要なんじゃないかしら。


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はじめに
桐生お召しから龍村織物専属デザイナーへ
“柄”を生み出す演奏家
桐生で唯一の絹専門の染め屋
今もなお現役で筆を握る図案作家
2人の整経屋からみた現実と未来
高速化に対応して世界屈指の職人へ
桐生織物の職人たち
機械直しから紗織の名人へ
全盛期を支えたお召し織物の稼ぎ頭
経糸と共に繋いだ夫婦の絆
商品の価値を決める最終段階
緯糸の糊を取るシボ取り
蒸気で引き伸ばす湯のし
湯のしの実演を見ながら
手に残る勲章
全盛期の休日
冬物と夏物の違い
職人同士の繋がり
結婚生活と仕事
整理屋として残った理由
現在の絹糸
懐かしい着物姿
もう一度着物を身近に
桐生の織物産業を陰で支える
あの光景を再び。桐生で八丁撚糸機を動かした立役者
シンポジウム
職人が語る桐生お召しの系譜

ちょっと一息/コラム
お召しチャート
編集後記

 

上岡さんの手を触る学生。上岡さんは少し照れているようだった。

前回実演頂けなかった機械も動かして頂いた。