保倉 私は、桐生の織物文化というのは十分誇っていいと思うんですよ。
この前、ロシアに行ってきたんですけど、ロシアの中に麻織物で有名な所があるんです。今はすっかり衰退しちゃっているんですけどね。また、姉妹都市になっているリヨンなども同じですね。さらに、ミラノには織物組合みたいなのがあってね、そこで桐生の織物組合みたいに売っているんですよね。で、そこに入ってみましたらフランスの有名ブランド物、みんなあるんですよ。ということはあそこでみんな織っているんですね。
また、3年ほど前ですけどね。ニューヨークで見たんですけど、ブランド物で、その会社のところに行きましてね、馬の……。
――ポロですね。ラルフローレン。
保倉 そう、その会社。そこに行きましてね。商品をしばらく見ていたんですけど、どっかで見たことあるなぁと思ったら、案外桐生で作ったものじゃないかと思ったんですね。で、今は“メイド・イン・〜”というのは一切入れてないですね。でも、産地の中で強引に入れるところもあるんですけどね。韓国ぐらいが入れていますよね。中国はもう入れてないですね。それらは全部“メイド・イン・アメリカ”だったり、フランスになっちゃうんですよね。
――産地が「日本」というのはそれほど意味がなくなっているんですかね?
保倉 でしょうね。でも、残存というのは嫌な言い方ですけど、桐生だってまだお召しを織っているんですよね。そういうものをその程度の需要でやっているのは高くつくし合わないけど、ついでだからやっているという現状もあるかもしれません。
――なんだか暗くなっちゃうなぁ(苦笑)。
保倉 世の中の流れだからね。それは当たり前のことですよ。日本だって昔、生糸や絹織物を輸出して、儲かったというのはそういうことでしょ。とにかく日本で起きたという事は日本が安かったという事ですよね。なんでも“メイド・イン・ジャパン”で。車だってその通りです。
ミラノが栄えたのが日本と似ているんですけど、イタリアというのは日本と良く似ているんですよね。ちょうど明治維新と同じ時に今のイタリアの国はできているんです。意外と古いようですけど断絶していますからね。私も驚いたんですけど、同じ運命なんですよ。日本だって、群馬の土地、それから信州の一部を含めて製糸が盛んだったでしょ?あの時栄えたんですよ。だから桐生は横浜と直結していて、例えば、日本では電気と電話これは横浜が一番です。二番が桐生。横浜とかけていたんでしょうね。
――糸の話を聞いた時に、当時は横浜で合格した輸出前の糸を使って織っていたという話を聞いたことがあります。
保倉 あそこに検査場を作って、そこで基準を全部決めて、その検査を通ったものが正式なもの。だから、前橋で作った生糸を横浜に持って行って桐生に持って帰ってくると。実際には桐生に来る糸よりも海外に送る糸の方が多かったんですね。連絡を取る必要があったんでしょう。その時の桐生は大変景気が良かったんですね。東京より先なんですから。
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