――昔と今で染料が変わったと思うのですが、染め方は変わりましたか?
橋本 いや、染め方自体は変わらないけどね。みんな違った染料になってくるとすでに作った色や未だに流通している色に合わせるのが難しいんですよね。
――昔のサンプルにあるような色を出すのは難くて出せないですか?
橋本 まるっきり違う分量で作らないとね。
日本の染料の会社は大手メーカーも合併やらの統廃合で少なくなってきたよ。直接染料っていうのを使うんだけど、そこに発ガン性物質がたくさん入っているから、最初は台湾あたりで商品を作っていたらしいんだ。台湾の方が忙しくなったら今度はフィリピンとか。でもそういった国々も経済力がついてくれば環境問題だって出てくる。それでほとんどの日本メーカーの生存が苦しくなっちゃったんだね。結局今残っているのは3社くらいかな。
昔はメーカーが5つあれば1種類の染料、例えば赤なら赤でも、それぞれの会社が出している色に微妙な違いがあって、それをこっちで見極めながら染めていたけれど、今はほとんど1つになっちゃったと言っていいな。
――糸1キロに対してどれくらいの量の染料を使うんですか?
橋本 それは色の濃度によって違いがあるけれど、一般的な色の濃度だと2、3%。黒の場合は10%ぐらい。そうしないと濃くならない。濃くするために染料をいっぱい使って、繊維が吸収する飽和状態までもっていくわけですよ。
それをやると染めた後の水洗いがやっぱり多くなるんですよ。昔はここにも今の歩道幅ほどの川があってね。その川の常に流れてくる新しい水で糸を濯ぐんですよ。昔は川自体も多かったしね。今はねぇ、染色機に水を入れ替えて、1、2回ぐらいの水洗で済みますけど、色が落ちた水の中でやってるわけですから、効果がうんと悪いんですよ。流水なら新しい水がポンポン流れてきて洗えるから効果は良い。
|