――小学生の頃社会科見学で桐生に来て藍染めをしました。その時は1段目、2段目といった階段式の水場で洗いましたけど、そういうのは使わないんですか?
橋本 それは水量を任意に変化させる方法だね。木の枠を川の中に入れて、そこにまたいで糸を洗うんだよね。でもその方法もだんだん「やっちゃダメ」ってなって、次はポンプを川の中に入れて、うちまで水を引き込んで洗っていた時期があった。
石川 汲み上げて?
橋本 そうそう、水洗管で。で、だんだんそれも水が汚れてきたりして、結局今は水道水。
石川 この辺でも桐生川から来てる水はもう汚い?
橋本 う〜ん、実際には汚くはないけどね。
石川 かなり桐生の中でも上流だもんね。昔は魚も住んでたし。
橋本 まあ昔はこの辺りでも何でも川に流しちゃっていたらしいよ。それでも汚いっていう苦情めいた話はなかった。今は1軒か2軒流すと「わ〜、変な色の水がいっぱい出てきた〜」って、すぐ役所に行くんだもん(苦笑)。
今はもう水が豊富に使えないし、第一ここにはほとんど川の流れがないんですよ。もともとは田んぼに水をやる用水路だったんだけど、もうこの下に田んぼがないからね。
石川 覚えてるよ。私が子供だった頃は、この辺りみんな田んぼだったよ。
橋本 そうでしょ。もう必要ないって水を流さなくなったから、余計に川は汚くなったんだよ。
――染めの染料が悪影響を及ぼしたってことはないですか?
橋本 それは全くないね。だって当時は水量もあって流れていたんだから、そんな心配はなかったんだよ。役所の人が来るとよく言うんです。「何で川があるのに水を流さないんだ」って。水を流しさえすれば川は自ずと綺麗になるのにね。
石川 澱めばゴミも溜まるしね。何で流さないんだろう。じゃあ橋本さん、今度役所に流すようにちょっと言わんと。
橋本 やってみるけどね。
石川 俺もこれ見直そう。今後何か会合があったら言おう。
橋本 その前の川にも魚がいっぱいいたんだから。水車もあったしね。
――昔は水車が並んでいたらしいですね。川の水と水道水で、濯ぎの仕上がりに違いがありますか?水道水って塩素とか入っていますし。
橋本 塩素が少し入っていても、あまり影響しないね。それより鉄分を多く含んだ水が一番困る。昔から渡良瀬の水は鉄とか銅が足尾銅山から流れているからね。
石川 確かに渡良瀬川の水を使って水洗いしてる姿ってなかったな。桐生川ばっかり。
橋本 鉄とか銅が含まれていると、色が変化しちゃうんですね。染めていた色が微妙に変わってきちゃう。
石川 あ〜、そう言われてみればそうだね。
橋本 桐生川の方が人気っていうのは水の質が抜群に良いんですよ。
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