桐生お召しに関わる職人たち
桐生お召しと職人の系譜
桐生市老人クラブ連合会/NPO法人桐生地域情報ネットワーク

太縄 そうですか、そりゃ大変でしたよね。八丁は糸を撚る時、何かを付けてますよね。

藤井 あれはね、水だけです。糸自身に糊が付いてますから、その糊を溶かすようにして撚ってゆくんです。それで糸を繰る枠がありますよね、あの枠を最初に全部濡らしちゃうんですよ。だからプラスチックじゃダメなんだよね、芯まで水が染み込まないからね。あの四つの木枠ならば中まで水が染み込ますがね。森秀さんもそれでやってますよね。
 その糸繰りが繊維工業試験場にはなかったわけ。それでうちで商売やめた時にあそこで預かってもらって、その後織物組合に寄付する約束になっていたわけ。だけどそっちの話が途切れちゃってそのままになって新井さん家へ。
 けど、新井さん家もいろいろあって、私が預けてたのが邪魔になっちゃって、結局は繊維工業試験場に行って、八丁が動くように動体展示にして欲しいんだって。

太縄 そのままちゃんとして残ってたわけね、それじゃやっぱり。

藤井 八丁と管巻きは残ってたけれどもあっちこっち傷んでた。なんせ使わないで何かを入れておいたり、展示物を乗せた台にされちゃったりね。だから、以前に八丁やってたところへ私が行っちゃ無い部品を集めたりしてね。
 で、錘があるでしょ、あれが戦後はステンレスなんだよね。だからサビが出ないんさ。今泉さんで3カケくらいもってて、それを一通り30本、使わないってから譲ってもらったん。繊維試験場だから、毎日回っているわけじゃないから濡らして使ってもある程度ほっとくがね。そういう使い方だと鉄だとサビがでるから、ステンレスなら良いだろうってんで、もともと付いていた錘を全部外したんですよ。

――もともとあった機械は全部預けているんですか?

藤井 機械なんかは、織物組合の事務局長がライトバン持ってきて積めるだけ積んで簡単な機械は全部寄付しちゃったん。平成8年に家を建て直すんで整理したんですよ。そんときに錘も持ってったの。八丁だの大きいのは新井さん家で預かってもらってね。

太縄 新井さんとこも整理する時に、やはり倉庫にいろんなものがあって「これだけはどうして捨てちゃうのにはもったいないんだけど、置く場所もないから太縄さんのところで預かってよ」って、倉庫に預かり物があるんですよ。それは高機で、組み立てれば3台分くらいあるのかな、だけどもうかれこれ3年くらいになるから、シートが破けて傷み始めてる。


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はじめに
桐生お召しから龍村織物専属デザイナーへ
“柄”を生み出す演奏家
桐生で唯一の絹専門の染め屋
今もなお現役で筆を握る図案作家
2人の整経屋からみた現実と未来
高速化に対応して世界屈指の職人へ
桐生織物の職人たち
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経糸と共に繋いだ夫婦の絆
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桐生の織物産業を陰で支える
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客観的に見た桐生織物業界
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藤井さん家の機械の行方
錘・垂ず輪・スピンドル
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猫の毛皮
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大縄機料に残る様々な道具と機械
海外に残る桐生の織機
シンポジウム
職人が語る桐生お召しの系譜

ちょっと一息/コラム
お召しチャート
編集後記

 

藤井さんのお話は太縄さんにとっても始めて聞くことがあったようだ。